イギリス交換留学〜私はstudy FROM abroad〜

 

日本もイギリスも、大学生は今なお自宅からオンラインで授業を受けている。外大の場合は昨年の4月からオンライン授業が始まったので、もうすぐ丸一年だ。

かくいう私も渡航規制によりイギリスの大学の授業を日本から受けている。そのことは以前から何度か記事で触れてきた。

今回お伝えするのは、そんな予想外の展開に満ちた2020年度イギリス派遣留学で、私が日本から現地の大学の授業を受けるに至った経緯のいわば総集編だ。この記事が誰かにとって有益なものとなるかはわからないが、備忘録的に今回もつらつらと書き連ねていく。

 

過去の記事↓

どうなる!?気になる今年の留学事情 〜留学時期編〜(2020年6月21日公開)

留学予定者必見!2020年留学事情 〜オンライン留学のメリット・デメリットを大解剖〜2020年8月24日公開

オンライン留学、1週間授業を受けてみて(2020年10月25日公開)

家から通うSOASでの1日 A Day in My Life at SOAS from Home(2021年2月28日公開)

 

● 交換留学における日本の大学側の指示

私の留学形態は、在籍する東京外国語大学(以下 外大)とその協定校(ロンドン大学SOAS)の間での交換留学(派遣)だ。そして少なくとも派遣留学の場合は、在籍する日本の大学の指示に従わなければならない。

例えば外大では2020年度派遣留学について、「日本の外務省が定める感染症危険情報がレベル1に下がるまで渡航を認めない」としている。渡航が認められなければ、たとえ独断で現地に行っても奨学金が下りないし、そもそも派遣留学として認められない。

私の留学予定先だったロンドン大学SOASは、正規生と同様、交換留学生にもオンラインでの受講を認めた。当時他の多くの協定校で交換留学生の受け入れが中止となっていた状況を考えると、それはとても幸運なことだった。外大側も「受け入れ校の許可があれば、渡航をともわなくても派遣留学として認める」としていたので、晴れて私はSOASの交換留学生となった。私の「オンライン留学」の始まりだ。

例年日本からSOASへやってくる交換留学生は外大や他の大学も含め一定数いるのだが、今年度(2020/2021)は私1人だった。

*感染症危険情報は外務省海外安全ホームページより確認できます(2021/03/17時点)

*2020年度の派遣留学の取り扱いについてはこちら

*東京外国語大学「留学案内」はこちら

 

● 感染状況に左右される留学

外務省海外安全ホームページ|英国より(2021/03/11 時点)イギリスの感染症危険情報は、留学開始時の2020年9月から今日までレベル3(渡航中止勧告)のままだ

オンラインでの留学開始当初は、Term2が始まる1月にはイギリスへ渡航できるのではないか、などと淡い期待を抱いていた。そのため外大、SOASの両学に「渡航規制が緩和され次第、渡航したい」という旨を伝え、イギリスのビザ申請に必要なCAS(Confirmation of Acceptance for Studies)も発行してもらった。

ただビザの発給にはそれなりの手数料がかかるため、実際に必要になったら申請すると決めて様子をうかがっていた。寮も契約の手続きを進めようとしていたが、現地の感染状況の悪化を受けて辞退した。

こうした一連のやり取りや手続きを学期中に行うことは簡単ではなかったが、大学の各部署の方々や周囲の人たちに支えられ、なんとか乗り越えることができた。

 

● 奨学金の辞退

しかし2021年の2月下旬には「奨学金辞退届け」を提出。私が今回の留学で受給予定だった奨学金の規約には、条件として「年度内(2021年3月)の渡航」があったからだ。

留学プログラムの終了までは残り3ヶ月ほどあるが、その間に急遽渡航規制が解除されことは可能性としてほぼないだろう。こうしていよいよ渡航の可能性がゼロになった。今さら動揺することもなかったが、心の片隅では一抹の寂しさを感じた。

 

● これが私の留学

Free-PhotosによるPixabayからの画像

ときどき今でも、「もし留学に行っていたら今頃…」なんてたらればを、頭の中で独り言ちることがある。しかし非日常が日常と化する中で、かつて思い描いていた留学生活は遠のき、代わりにリモートで海外大学の授業を受けるという、以前なら考えられなかったことが当たり前になっていた。

これが私の留学。

そんな諦めのような、しかし切り替えとも言える、一つの区切りが私の中ではついたのだと思う。

 

そういえば2021年1月からTerm2を開始するにあたり、現地大学から「Term2はイギリスに来るか、それともそのまま日本からリモートで授業を受けるか」という質問のメールを受け取った。そのとき書かれていたのが、 “If you will carry on studying from abroad in Term 2…” というもの。

study abroadstudy from abroad。たった1ワード違うだけなのに、意味が180度変わってしまうとは。ある意味目から鱗だった。

 

目指していたものと結果は違えど、一番大事なのは与えられた環境でどれだけの学びを得られるかなのかもしれない。もちろん色々な意味で私は恵まれた環境にあると思うし、他のより大きな出来事に比べれば私の渡航取り消しなんて些細なものかもしれない。それでも私は自身の経験を過小評価する必要はないと考えているし、だからこそ今はもう少しここで踏ん張ってみようと、内面的な紆余曲折を経た今は思う。

見出し画像:Please Don’t sell My Artwork AS ISによるPixabayからの画像

 

(文・小林かすみ)

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長期休暇に入ると海外行きたい欲求が高まる日本語専攻(2018年度入学)。2019-2022年度編集長。好きな本は片桐はいり著『グアテマラの弟』。