彼らは何処へ -多国籍団地の今-

 いちょう団地と一般道を挟んで、ポツンと佇むプレハブ小屋。OPENと書かれたネオンサインが光る地元民ご用達の雰囲気のお店、入るのに少し、ためらってしまう。しかし、勇気を出してスライドドアに手をかけ、一歩踏み出せば、そこはもうスパイスの香り漂うベトナムの地。 

 ベトナムに旅行しに来たと勘違いしてしまう程に、異国情緒を感じる「タン・ハー」は本格ベトナム料理を楽しめる名店です。店内の壁際には棚が据えられ、そこには無数の東南アジアンフード。選り取り見取りでワクワクしてきますが、その前に、、、 

 新歓行事の一環で訪れた「いちょう団地」このサイトに訪れる皆さんなら、知っているかもしれませんね。その居住者として東南アジア移民、特にベトナム移民を多く抱えるという日本を代表する移民の地です。団地内の看板が多言語表示であることが、それをよく表しています。 

けれど、それはもう、きっと過去の話。 

団地の近くの中国物産商店、「徳盛源」の方曰く、もうあまり移民は住んでいないのだとか。県による公営住宅であるいちょう団地には、入居に関して様々なルールがあります。その一つが所得制限。月収が一定額を下回っていないと入居することはできません。以前、いちょう団地に入居していた移民は職を求めて日本にやってきていたため、その制限をクリアしていました。しかし、世代を経るにつれて、彼らの収入も増え、所得制限を上回る人々も多くなりました。そうなってしまえば、もう団地にはいられません。そうして、多くの移民、特に若者は団地を出ていくことになりました。 

 今、団地に残るのは高齢者ばかり。その影響か、取材当日も休日にもかかわらず子ども達の騒ぎ声は一切聞こえてこず、団地全体が静寂に包まれていました。長年日本に居住している高齢者は、日本語もある程度理解できるようになっているのでしょうか?比較的新しいと思われる看板には、多言語表示はされていませんでした。    

実際のゴミ捨て場

 団地に併設された、屋内商店街。少し寂れた雰囲気で、活気はあまり感じません。活気がない、それ以外にもこの地の少子高齢化を感じられることがありました。介護施設やデイサービスの多さです。あまり広くない商店街の中でも、複数の介護施設やデイサービスを見つけました。それらの多くは比較的新しく、きれいでした。需要があるのでしょう。若者がいなくなっても経済は回せるのです。 

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商店街にある介護施設

 商店街内の東南アジアからの輸入品を扱ったお店でショッピングを楽しんだら、お待たせしました。お昼の時間です。さあ!ベトナムご飯だ!! 

タン・ハーで食べたお昼ご飯

 タン・ハーで食べた店長おすすめの麺料理。名前をメモし忘れる痛恨のミス。ベトナム料理らしい辛さと酸味で箸が止まりませんでした。かなりボリュームがあって、お腹いっぱい、大満足でした。とても美味しかったから、機会があったらまた食べたいのに、手がかりはこの写真だけ。いつかまたこの美食に会えるでしょうか? 

 壁際の東南アジアフードはどれも美味しそうで、お土産に生麵を買うまで、とても悩んでしまいました。後日、自分で調理して食べたお土産は美味しかったけれど、お店で食べたあの麵料理には遠く及びませんでした。 

 ご飯を食べながら、仲間と様々な話をしました。先輩方の大学生活のお話や、新入生たちが各々の専攻を選んだ理由など。自分には今までなかった世界のお話ばかりで、こんな出会いが、世界が、これから待っていると思うと、胸が弾んできます。 

次はどんな出会いが待っているでしょうか。