前編に引き続きインドの古典語”サンスクリット語”の概説を行う。今回は文法について。

皆さん、こんにちは。

 

今回は、前回に引き続きサンスクリット語について書いていきたいと思います。

さて、前編ではサンスクリット語の歴史や文字、音声規則(Sandhi)などについて簡単に解説しました。

 

今回は、いよいよ名詞・形容詞の格変化や動詞の活用、時制など学習の核となる内容に突っ込んでいきたいと思います。

 

まずは、前提として以下のことを押さえておいてください。

・ サンスクリット語の名詞・形容詞は(男性・中性・女性)、(単数・双数・複数)およびの三つの概念を備えています。双数という概念は見慣れないかもしれませんが、名前の通り二つ・二人を表す場合に用いられます。三つ・三人以上はすべて複数扱いになります。

 

とは、誤解を恐れずに述べてしまえばその語の文中での役割を示す概念です。サンスクリット語は八つの格をもっています。以下に極めて簡潔な説明とともに載せておきます。

 

主格:主語・述語

呼格:呼び掛け(〜よ!)

対格:直接目的語(〜を)

具格:英語のby、withなど

為格:間接目的語(〜に)

奪格:英語のfromなど

属格:英語のofなど

処格:場所(英語のin、atなど)

 

・ サンスクリット語の動詞は人称、数および態によって変化します。

 

・ サンスクリット語には三つの態が存在します。すなわち、能動態反射態そして受動態です。反射態という概念もまた見慣れないと思いますが、これは行為者が「自分のため」に行う動作を表すとされます。

 

・ サンスクリット語にはまた、三つの法が存在します。すなわち、直接法願望法そして命令法です。願望法は願望や要請、仮定などを表します。

 

・ サンスクリット語の時制は、大雑把には現在過去未来アオリスト完了によって構成されます。(実際にはもっと細かいのですが、ややこしくなるので割愛)アオリストというのは「その日」に起こった出来事について用いる極めて近い過去を表す時制であるという定義があり、このことによって過去および完了と区別されます。しかしながらここでは単に過去だと思っていただいて構いません。

 

では、前置きが長くなりましたがこれらのことを念頭に置いて、サンスクリット語の曲用・活用を解説していきます。

 

まずは名詞・形容詞の格変化(曲用)について見ていきます。

サンスクリット語の名詞と形容詞は、ふつう語幹(不変化部分)+語尾(変化部分)によって構成されます。形容詞は名詞を修飾しますが、基本的には修飾する名詞に性・数・格が一致します。以下に曲用の例を載せておきます。(PCの都合によりマクロン(長母音の記号)ではなく長母音の部分は母音を重ねて表記しています。ごめんなさい。)

 

語幹senaa-「軍勢」女性名詞

単数 双数 複数

主格 senaa sene senaas

呼格 sene sene senaas

対格 senaam sene senaas

具格 senayaa senaabhyaam senaabhis

為格 senaayai senaabhyaam senaabhyas

奪格 senaayaas senaabhyaam senaabhyas

属格 senaayaas senayos senaanaam

処格 senaayaam senayos senaasu

 

嫌になりましたか?私も嫌です。

 

上記の通り、理論上は1つの名詞は3×8=24通りの変化をします。実際には形が被っているものも多いですが。名詞は、語幹がaで終わる男性・中性名詞、語幹がaaで終わる女性名詞(上の例)、語幹がi、uで終わる男性・中性・女性名詞など語幹の末尾の文字によって性と曲用の仕方が決定します。つまり、それぞれにまた別の曲用があるので語幹ごとにそれを覚えなければなりません。形容詞の場合も同様です。

 

次に動詞の活用を見ていきましょう。

サンスクリット語の動詞は語幹+人称語尾によって構成されます。

 

bharati「担う」直接法・現在・能動態

単数 双数 複数

一人称 bharaami bharaavas bharaamas

二人称 bharasi bharathas bharatha

三人称 bharati bharatas bharanti

 

名詞・形容詞に比べると表がコンパクトですが、これはあくまでも直接法・現在・能動態のみの活用ですから、例えば直接法・現在・反射態や直接法・過去・能動態はまた別に活用が存在するので覚えます。

 

…とまあ導入としてはこんなものでしょうか。曲用・活用表をいちいち全部載せるわけにもいきませんし、あまり突っ込んだ解説をしても混乱を招きそうなので極めて簡単でしたがこの辺で終わりにしておきます。

 

というのもサンスクリット語以外にも例えばラテン語古典ギリシア語のような古典語は、極論を言ってしまえば文法書の曲用・活用と語彙、あとはちょこっと文法のルールを覚えてしまえば、読解はできてしまうということになるからです。そもそもほとんどの学習者は古典語を話したり、聞いたりすることはまずなくて、文献の読解やちょっとしたライティングをするくらいでしょうから、この記事には非常に簡潔ではありますが概要らしい概要を載せることができたと思います。ラテン語もほとんど同じ言語構造ですよ。(古典ギリシア語は学んでいないのですが、同じ感じだと思います)

 

何か質問や意見などがあれば是非、アンケートなどでお知らせください。

 

(文:加瀬 拓人)