源流は遡ること紀元前1500年!?インドの古典語”サンスクリット語”はとても複雑・・・

皆さん、こんにちは。

この「外大生と巡る世界のことば」シリーズでは、東京外大に設置されている27言語以外にも様々な言語を番外編として紹介していきます。

どの言語も一筋縄ではいかないユニークなものばかりですから、読者の皆さんには「こんな言語が世の中には存在するのか…。」などと思っていただき、あわよくば習得を志していただきたいものです。そして究極的には皆さんを言語オタクに仕立て上げることができれば本望です。

さて、番外編の初回を飾るのはインドに誕生した古典語、サンスクリット語であります。

 

このサンスクリット語という言語、名前を聞いたことはあるという人は多いと思われます。初見のインパクトは抜群といったところでしょうが、ではその内実はどうなっているのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

はじめに断っておくと、実は紀元前1500年頃にまで遡って『リグ=ヴェーダ』に用いられていたヴェーダ語などを広義のサンスクリット語と捉えることも可能なのですが、ここではより一般的かつ体系的な古典サンスクリット語に焦点を当てます。基本的に、サンスクリット語といったときはこの古典サンスクリット語を指すと考えていただいて構いません。

 

さて、この古典サンスクリット語はおよそ紀元前5世紀にその文法的体系を完成しました。そもそも、サンスクリットという語彙の意味するところは「調えられた、磨き上げられた」でありまして、後述しますがその言語体系は恐ろしくシステマティックです。(この特徴はラテン語や古典ギリシア語など他の古典語にも共通しています)その後、インドでは『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』の二大叙事詩などのサンスクリット文学が花開く一方で、サンスクリット語に対してプラークリットという口語の普及が進みました。(その中の一つであるパーリ語は東京外大で開講されていますね)結果としてサンスクリット語は書き言葉としての地位を確立し、宗教や文学、その他の学術的な文書に広く用いられるようになりました。そして現在、英語やヒンディー語が主流のインドにおいても公用語としての地位を獲得し、知識階級を中心に少数ながら話者が存在しています。つまり決して死語ではないのです!

 

では、いよいよその言語体系に目を転じていきましょう。

まず表記方法ですが一般的にはヒンディー語などと同じくデーヴァナーガリー(देवनागरी)を用います。一方で、ことサンスクリット語に関しては様々な表記方法が用いられており、本記事では外国語として学ぶ際に最も親しみやすいと思われるローマ字転写様式を用いることとします。一部、ṃ(アヌスヴァーラ)やḥ(ヴィサルガ)のような特殊な文字とそれに伴う発音を用いるのですが、基本的にはローマ字表記の通りに発音すれば大丈夫です。

 

saṃskṛta-(サンスクリタ):(形)調えられた、磨き上げられた

keśava-(ケーシャワ):(名)ヴィシュヌ神

brahmahan-(ブラホマハン):(形)バラモンを殺す

 

そして、サンスクリット語の大きな特徴の一つである文中での音声変化(Sandhi)について紹介しましょう。この規則がなかなか厄介なのです。どういうものか簡潔に説明すると、文中で単語間の語末と語頭が規則に従って変化を受ける現象が起こるのです。フランス語を学んだ方は、リエゾンやアンシェヌマン、エリジオンに近いものだと考えて下さい。しかしながら、サンスクリット語におけるそれは甚だしく、もはや原型をとどめていないようなケースも存在します。

以下に規則の一部を挙げましょう。

 

同類の単母音は結合してその長母音になる

na + asti = nāsti

 

a以外の母音の前では末尾のeとoとはaになる

prabho + ehi = prabha ehi

 

asは有声子音の前、およびaの前(このaは消失する)でoになる

devas + gacchati = devo gacchati

 

このような規則を全て記憶しなければ文法解析を行うことすらできません。また、Sandhiに関しては語末・語頭間の音声変化ですが、この他にも語の内部での変化なども存在するのでたまったものではありません。この規則を覚え、文をバラバラに噛み砕いてから初めて、解釈を行うことができます。

 

さて、これから名詞・形容詞の格変化や動詞の活用、時制などの核心部分に迫ろうと思っていたのですが、今回でかなり内容を詰め込んでしまったので、次回のサンスクリット語編②に回そうと思います。サンスクリット語の真の面白さ(恐ろしさ?)が分かりますよ。

乞うご期待!

 

(文:加瀬 拓人)

 

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