インタビュー・冬のジョージアがおもしろい🇬🇪2話完結—お正月編

見出し画像:Metronome.Ge

前回までのあらすじ

ジョージアではクリスマスは大して祝わない」という驚きの新事実を耳にした筆者は、同じジャパ科で、ジョージア出身のジョージ(仮名)に話を聞くことに(注1)。旧暦にあわせて1月7日に祝うということ以外、特に何をしなければいけないというきまりはないということがわかった。しかし一方では教会の周りを歩きながら夜を過ごすという興味深い証言も得て、逆に謎が深まった。

はたしてお正月はいかに…!?

注1 ジャパ科とは言語文化学部日本語専攻と国際社会学部日本地域専攻の総称(俗称)。国際日本学部の新規設立に伴い、2018年度をもって終了した。

 

花火におみくじ、伝統菓子、ジョージアのお正月は賑やからしい

ジョージア(国)は正月がメイン」とジョージ(人)も明言する通り、お正月はクリスマスとは打って変わってかなり楽しそうだ(注2)。ということで本記事では、ジョージアの大晦日から年明けまでのイベントを一挙大公開。

注2 時系列としては、1月1日お正月(グレゴリオ暦) → 1月7日クリスマス(ユリウス暦)

 

いっぱい食べよう、大晦日

まず大晦日はどうするのかというと、「いっぱい料理を作る」らしい。とてもアバウトなので、さらに斬り込む。

新年になって初めて食べるもの?なんでもいいよ。

by George

これぞのれんに腕押し。私は聞く相手を間違えたのかもしれない。

Credit: kpzfoto/Alamy

こちらは来客を歓迎する特別な食事სუფრა(スプラ)の様子。大晦日もイメージとしてはこんな感じらしい。

 

გილოცავ ახალ წელს [gilocav akhal tsels] (ハッピー・ニュー・イヤー)

ジョージアでは新年の始まりを祝して、各々の家の庭から花火を打ち上げる風習がある。庭付きの戸建てが望ましいが、中にはアパートのベランダから打ち上げる人もいるとのこと。あっぱれジョージア。

 

2017 წლის საახალწლო ფეირვერკი თბილისში (2017年 新年の花火 トビリシにて)

トビリシ市内の様子。これでよく事故にならないな…

しかも実際には、新年になった途端にみんなでハグをしてお互いに祝福しあい、乾杯し、それから花火を打ち上げるのだという。さすがジョージア、アルコールが入った状態で花火に着火するとは。

一杯だけだからね。ジョージアでは何も飲んでないに等しい。

by George

私の心配を見事に一笑に伏した。しかし本当に一杯でおさまるのかは怪しいところだ。日本ではまだ知名度が低いが、ジョージアはワインの名産地なのだ。あの狂喜乱舞する打ち上げ花火といい、酒豪伝説といい、聞けば聞くほど怖いが面白そうでもある。

ちなみにこの花火、何か特別な意味があるのかと思いきや、「意味はないと思う。綺麗だから(笑)花火はジョージアの伝統じゃないし。とのこと。たしかに、お祝いごとに花火というのはあらゆる地域で定番となっている。また花火を打ち上げた後は1−2分で家の中に入るそうで、そこは案外あっさりな様子。

 

あま〜い一年になりますように

さて、乾杯して花火も終わり、家に帰ると次は親族でのお祝いが始まる。そしてここで親戚の一人がお菓子を持ってやって来る。このお菓子には英語で言うところの “sweet year” つまり(甘いお菓子にかけて)「素敵な一年になりますように」という願いが込められているそうだ(注3)。なんだか可愛らしい。

注3 sweetはスラングで【素晴らしい】の意。

またこのお菓子担当は毎年持ち回り制で、一年の終わりにその人がお菓子と一緒に持ってきた運勢が吉だったか凶だったかが分かるという、一種のおみくじ的要素も兼ね備えているらしい。

おみくじ担当の人が持ってくるお菓子はキャンディやチョコなどのスナック菓子だが、それと一緒にジョージアの伝統的なお菓子も振る舞われる。その代表的なものが、正月限定「くるみ in はちみつ」。

くるみ in はちみつ、გოზინაყი(ゴジナキ)

美味しそう。他にはこんなものも。

ぶどう果汁のお菓子、ჩურჩხელა(チュルチュヘラ)

 

ところで、ジョージアでは旧暦のお正月(1月14日)も祝う慣習があるというのはみなさんご存知だろうか。私は知らなかった。一体それはどのようなものなのだろうか。またまたジョージの言葉を借りると、「プチ正月。本物(1月1日)の半分くらい張り切ってやるの。やることは一緒だけど。」「花火(は)もうちょっと少ないし、作る料理ももうちょっと少ない。」というのが旧暦のお正月なのだそう。そしてどちらのお正月でもお菓子が振舞われる。ただし旧暦の方ではスナック菓子が優勢の模様。

Photo by ジョージのお母さん

ジョージの実家のお正月のテーブル

 

「そういえば、なんか七面鳥も食べる気がする。うちはしないけど。」なるほど。結構色々な情報が集まったので、ここでこれまでの内容を整理する:

Happy New Year → ハグ → 乾杯 → 花火 → お菓子パーティー → 七面鳥を食す🦃

最後の七面鳥で一気にクリスマス感(アメリカならサンクス・ギビングも)。

クリスマスといえば、今回の記事を通してまだ一度も登場していない人物がいることに皆さんはお気づきだろうか。

 

信じるものは、頂ける

正月の伝統行事について語り尽くしたところで、ジョージが一言。

あとね、プレゼントはない。

by George

ないんかーい!

正確には、サンタを信じる良い子のもとにはサンタさんがプレゼントを持ってやって来るそうな。

そう、ジョージアでは新年にサンタさんがやってくるのだ!筆者はサンタさんが出動するのは24日の夜限定だと思い込んでいたが、ジョージアではサンタとクリスマスは切り離されて考えられているそうだ。最後まで期待を裏切らないジョージであった。

 

ということで今回は、冬のジョージア「お正月編」でした。冬のジョージア、私もいつか行ってみたい。

 

「インタビュー・冬のジョージアがおもしろい🇬🇪2話完結—お正月編」

インタビュアー:小林かすみ

インタビュイー:ジョージ

画像収集:ジョージ

 

2020年もワンダフル・ワンダーの記事を読んでくださり本当にありがとうございました。

どうか素敵なお正月をお迎えください。またベランダからの花火の打ち上げにはくれぐれもお気をつけください。

 

(文・小林かすみ)

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長期休暇に入ると海外行きたい欲求が高まる日本語専攻(2018年度入学)。2019-2022年度編集長。好きな本は片桐はいり著『グアテマラの弟』。