アイルランド旅行記 〜ヨーロッパの片隅で〜 宿泊編

 

どこに泊まるかは実はなかなかの難問だ。今時インターネット上でいくらでも宿泊先を検索できてしまい、逆にどれを選べばいいのかわからなくなってしまう。だからと言って、よほどのアウトドア派でない限り旅先での野宿は避けたいもの。「航空券は押さえたけれど、まだどこに泊まるか決めてない」という場当たり的な旅行が常の私にとって、この問題は切実なのだ。

そこで今回は、私がこれまでに体験した滞在方法や調べたことをもとに、アイルランドでの宿泊事情について少しご紹介しようと思う。

 

3.宿泊スタイル

B&B
B&BとはBed and Breakfastの略で、家主が旅人に寝床と朝食を提供するという仕組みだ。最近ではairbnbのようなサービスも登場したため既に馴染みのある人もいるかもしれない。しかしアイルランドでは昔、観光客の数に対しホテルの数が少なかったため政府がB&Bを奨励したという背景があるらしい(トム談)。

私も二泊だけB&Bに泊まったが、清潔さや安全性などはホテルと遜色なく、むしろホテルよりもアットホームで過ごしやすかった。またB&Bのいいところは、まるでその土地に暮らしているかのように生活できることだ。もちろん、ホストや他の宿泊客との交流を楽しむこともできる。

私は朝食(コンチネンタル・ブレックファスト)込みにしたので、朝は一階のダイニングで他の宿泊客と一緒に、紅茶に始まりお肉、卵、豆、ブラッド(ブラック)・プディンングとホワイト・プディング、トーストというお決まりの食事にシリアルがついた豪勢な朝ごはんをいただいた。ちなみにブラッド・プディングは今回の旅で新たに私の好物になったものの一つだ。

レストランにて。アイルランドの宿で定番の朝食はこれに下の写真のベイクド・ビーンズを足したようなもの。

 

サービスエリアのフードコートにて。フードコートでは他にもポテトやシチュー、菓子パンなど豊富な種類の中から選べる。

知人宅
特殊な例だとは思うが、現地につてがあれば何かと心強い。私はダブリンにいるほとんどの間、妹デリアのアパートに泊めさせてもらった(冒頭の写真は勉強するデリアと愛犬ジーナ)。一緒に現地のスーパーマーケットに買い物に行ったり洗濯物をしたりといった異国での日常生活は、案外発見の宝庫だ。時には痛い目も見るが(私は洗濯機の設定が分からず洋服が色褪せ&型崩れした)、普通の観光とはまた違った面白さがある。

ダブリンの閑静な住宅街。

学生寮
大学間の交換プログラムでなくても学生寮、それもアイルランドの最高学府トリニティ・カレッジに泊まる方法がある。それが夏限定のSummer Accommodationだ。人気な上に期間が8月の下旬までと短いので、早めの予約が必要だ。Expediaなど複数のホテル検索サイトを当たってみるのもいいだろう。フロントデスクでは親切な学生さんが24時間対応してくれるので安心だ。一つ注意点としては(これは他の宿泊施設にも当てはまるのだが)、8月や9月は肌寒いと感じても現地基準ではまだ暖房を入れる時期ではないため、寒さが苦手な人は対策が必要だということが挙げられる。

学生寮入り口。
ベッドに机、クローゼット。机の上にはバスタオルやシャンプー・シャワージェルなどのアメニティが置かれていた。バスルームとキッチンは同じフロアの人と共用。
部屋からの景色。

ところでこの学生寮、海外からの観光客が多いのかと思いきや、ゴールウェイなど他都市からやって来たご年配のアイルランド人宿泊客もちらほら見かけた。8月26日に来訪したローマ法皇を一目見ようとやって来たらしい。

余談だが、時を同じくしてダブリン市内ではHozierなど有名アーティストも参加した抗議集会が開かれており、私もバスに乗りながらHozierのTake Me to Churchを耳にした。宗教を取り巻くアイルランドの今を目の当たりにした瞬間だった。

ホテル
アイルランドでそこそこのホテルに泊まろうと思ったら、一泊あたり日本円で1.5万円は下らないと考えていいだろう。もちろんセールなどの場合を除いて。朝食はビュッフェスタイルが主流で、私はブラウン・ブレッドと呼ばれるアイルランドの伝統的なパンにバターやジャムをたっぷり塗ったのを毎朝食べていた。これがまたとっても美味しいので、機会があれば是非食べて欲しい。学生寮同様、暖房の使用開始時期には注意が必要だ。ただしフロントに言えばつけてもらえることもある。

ホステル
ホステルもアイルランドではとてもメジャーな滞在方法だ。今回の旅行では挑戦出来なかったが、簡単に言えば寮のようなものだろうか。一部屋に2つから多ければ8つ程度の(多くの場合)二段ベッドが置かれており、各地から来た旅行客が同じ空間で寝泊まりする(男女共用もあれば、男女別の部屋を用意している施設もある)。私が調べた限りではアメニティーは用意されていない場合が多く、朝食やランドリーサービスの有無などもホステルによって異なる。

ホームステイ
何かのプログラムに参加する場合にはこの選択肢もあるだろう。私はアイルランドでは体験したことがないので、他の方の記事を参考にしてほしい。

おわりに

大抵の旅の目的は観光かもしれないが、どこかに泊まることだって立派なその土地での体験だと私は思う。それにいくら名所を回っても、帰る先が居心地の悪い場所ではせっかくの旅の楽しさが半減してしまう。だから旅行に行くなら、宿選びもちょっぴりこだわりたいところ。

この記事が、アイルランドやその他の地域での滞在方法について疑問を抱いている人のお役に立つことを願っている。

About Kobayashi Kasumi 29 Articles
長期休暇に入ると海外行きたい欲求が高まる日本語専攻(2018年度入学)。2019-2022年度編集長。好きな本は片桐はいり著『グアテマラの弟』。