~言葉の森で歩む~ ベオグラード国際ブックフェア

(引用:Srpska Cafe)

自分の部屋の窓から外を見ると、全世界の書物が、人間が現在まで獲得した知識を表せるのか、という考えが時々頭の中にぱっと浮かんでくる。我々人類の知恵や思考が無限だと言われているなら、人類が一般的に限られた媒体で新たな知識を記し、代々伝えてきたのはどうしてだろうか?すべての知識を正確にまとめ、保存する媒体が作れるかどうか、今のところ判断することはできないと思う。もしかしたら、インターネットがその目的を果たす可能性があるかもしれない。

いずれにしても、限られたページですごい物語を体験したり、言葉の森で迷い込んだりすることには、魅力があると思う。さらに、母国のセルビアだけでなく、世界中の書物の魅力を楽しめるイベントに訪ねることにも魅力がある。

そのようなイベントは、セルビアのベオグラード国際ブックフェアである。

毎年10月末に一週間ぐらいセルビアの首都ベオグラードで、本と読書の文化を祭る大規模なフェアが行われている。ベオグラードのブックフェアで、セルビアだけでなく、世界20か国の代表的な出版社が出展し、様々な言語で本を出したり、作家との記者会見やインタビュー、サイン会などの読者と作家、出版社が集まるイベントがある。一週間で客がセルビアの最新の作品や名作、教科書、外国の読み物などを安く買え、作家や知識人と対談し、主賓の展示で様々なイベントに参加することができる。学生から知識人まで、年代を問わず、新たな知識を求めるため、フェアに参加している大勢の人々は本の森の中でアリの群れのように歩んでいく。[1]

アリの群れに私も含まれると思う。2000年代の始まりから客として参加し、学校で必要な小説や自分の趣味としての本を買っていた。好きなセルビア人作家や外国の本に興味があるので、様々なタイトルの本を本棚から取って、何分間も立ち読みする傾向がある。セルビア中世の歴史、C++プログラミングの入門書、異世界の旅立ちの若者向けの小説、ヒトの解体図集、全世界を覆う陰謀論の本、セルビア正教会の修道院のフレスコ画美術画集。どのような分野でも、興味を惹く書物が山ほどある。

(引用:Cerev)

ベオグラード国際ブックフェアに参加している人々は年々増えている。2017年度のブックフェアの公式サイトで発表された統計のデータによると、19万人を超えたという。世界最古だとよく言われている、フランクフルト国際ブックフェアや東京国際ブックフェアの参加者数と比べると、ベオグラードのイベントが小さく見える。しかし、実は、ロンドン・ブックフェアの参加者の人数は、客に限ると、1万3000人である。つまり、このデジタルの時代の中でも、小さい首都のベオグラードに19万人を招くのは素晴らしいことだと思う。

以前に述べたように、フランクフルト国際ブックフェアよりベオグラードの本の祭りの方が参加者数が少ないが、実はベオグラード国際ブックフェアは前者のイベントに基づいて作られたものである。さらに、ベオグラードの方がより新しいイベントだともいえるだろう。なぜなら、1956年にブラニスラヴ・チェラップという人のおかげで創立されたからである。彼はドイツで留学していたとき、フランクフルトの本の祭りに惹かれて、第二次世界大戦後のユーゴスラビアに同じようなイベントを作りたがっていた。戦後から11年、ユーゴスラビア初の国際ブックフェアが開催されたが、実はベオグラードではなく、現在クロアチアの首都ザグレブで開催された。

ブラにスラヴ・チェラップ(Бранислав Ћелап)(引用:Политика/Politika)

しかし、ベオグラードのフェア会場がより広いので、翌年1957年にベオグラードに移動した。その時から今まで無事に開催されており、セルビアとベオグラードの観光とビジネスのために貴重なイベントとなった。つまり、ブックフェアは1957年から71年の伝統と歴史を持っており、市民だけでなく、国民にとって大事な文化的なイベントだと言えるだろう。

刊行とビジネスにとって貴重なイベントなので、外国との経済的・文化的な関係が欠かせない。2002年から主賓のイベントが始まってから、アメリカやハンガリー、ポーランド、イラン、日本などの国々が主賓としてブックフェアに参加し、文化的なイベントを行っていた。主賓の他に、旧ユーゴスラビアの共和国やイギリス、フランス、中国、ロシア、日本などの外国の代表の展示もあり、外国の文学や科学のための本に興味を持っている人々がいるので、ブックフェアにとって重要なものとなった。最後に、セルビアは主にキリスト正教会の国のために経典と宗教の本が多くあり、正教会だけでなく、モルモンやエホバの証人、プロテスタント教会の展示もある。どのような国や宗教でも、展示の人と客達が、みんな滑らかに交流したり、会話したりすることは、ものすごい景色だと私は思う。

ベオグラード国際ブックフェアが、このように70年以上の伝統と歴史を越えて、セルビア全国の大人気イベントとなった。さらに、ブックフェアの国際的な資格のおかげで、セルビアと世界中の文化的交流の貴重な機会となり、セルビアは言葉で仲良しのメッセージを世界中に送っている。世界の事情がどのようになっても、きっと、本こそが未来への道を導かせる力を持つものだと私は思う。

(引用:Press Serbia)

引用リンク:

  • http://www.politika.rs/scc/clanak/196009/Knjiski-zavisnik-pustolovne-biografije
  • http://elementarium.cpn.rs/teme/nepoznata-istorija-sajma-knjiga/
  • https://sajam.rs/63-medunarodni-beogradski-sajam-knjiga-u-brojkama/
  • https://thenewpublishingstandard.com/arabs-dont-read-and-other-nonsense-why-the-mena-market-is-an-exciting-prospect/

画像の引用リンク:

  • http://www.srpskacafe.com/2018/10/citam-dakle-postojim-sutra-pocinje-sajam-knjiga-u-beogradu/
  • http://cerev.info/addzthis-sajam-knjiga.htm
  • http://www.pressserbia.com/poslednji-dan-62-medjunarodnog-sajma-knjiga-u-beogradu/
  • http://www.politika.rs/scc/clanak/196009/Knjiski-zavisnik-pustolovne-biografije