「大学にいる間になにかしらの価値が提供できたっていう実感が欲しい」俳句SNSを運営する外大生エンジニアの思いとは。 

河邉今人さん(フランス語科3回生

2017年12月、ある一つのSNSアプリがリリースされた。俳句を使ったSNSの「ニシキゴイ」だ。ユーザーは17音からなる言葉と写真を組み合わせて作品を投稿する。アプリ開発者の河邉今人さんにインタビューした。

プログラミングの勉強を始めたのは1年生の終わりのことだった。インターン先の先輩の姿を見て自分からプログラミングの勉強を始めた。昨年10月から寝る間も惜しんでアプリの開発を始めた。12月、自分の誕生日に合わせてニシキゴイをリリースした。

「SNSって結構複雑なんですよ、アプリの中でも。だから最初に作るアプリとしては完全に間違ってるんですけど」と笑う。ニシキゴイ開発のきっかけは高校生の時にニューヨークで見たSnapchatの流行だった。「24時間で消えるっていう制限、逆に不便なものをつけてめちゃくちゃ流行るっていうのがイケてるなあって思った。」Snapchatから着想を得て、17音という制限をつけてSNSアプリを開発した。

「17音っていう芸術の形をとったら素直な気持ちを言えるんじゃないかと思って。」自身が感じた他のSNSへの息苦しさから、ニシキゴイは気軽に、素直な気持ちを表現する場であってほしいと言う。制限があるからこそ感情を表現し易くなる。

俳句は本来は文字だけで情景を書き起こす。しかし、ニシキゴイでは写真と文字の組み合わせを楽しむ。「写真で世界を切り取って17音で切り取った世界を広げる」ニシキゴイのキャッチフレーズだ。写真を組み合わせたことで初心者も俳句に親しみ易くなるよう工夫した。

twitterでは言いにくいような気持ちも芸術として表現できる。

「若者の中で俳句のSNSが大人気みたいなことになったらなんとなくクールじゃないですか。」ターゲットは若者だ。もともと言葉は好きだったという河邉さん。短い言葉で表現する面白みを若い人たちに味わって欲しいという。昨年12月ニシキゴイをリリースしてから徐々にユーザー数は増えている。中には熱狂的なファンも。ユーザーの多くは20代後半以降の大人ユーザーだ。

これからの目標はニシキゴイをもっと多くの人に知ってもらうことだ。今年に入ってから運営メンバーが4人に増えた。メンバーが加わったことで新しい発見もあった。完璧を追い求める余り、これまでは広報に躊躇していた。しかし躊躇することなくアプリを広めようとする新メンバーの姿を見て、「使ってもらってから直そう」と考えるようになった。

開発の様子

 

「大学にいる間になにかしらの価値提供できたっていう実感が欲しい。」

昨年1月、福岡に住む祖父のもとを訪れた。ふと思い立って祖父に「おじいちゃんの人生で一番大切にしてきた言葉はなんですか」と尋ねた。その翌日、祖父は亡くなった。当時は悲しんだが、貴重な経験でもあった。周りを見れば、そんな体験ができている大学生はそういなかった。

直想便で撮影された写真

こんな体験を他の人にも提供したい。そう思って始めたのが「直想便」というサービスだった。カメラマンを派遣し、祖父母と孫の写真撮影と祖父母から孫への言葉のプレゼントを提供するサービスだ。今年に入って、以前このサービスを実際に利用した女性から祖母が亡くなった、祖母が亡くなる前に言葉を受け取ることができてよかったと連絡があった。今まで作ってきたものの中で一番価値を与えられたと感じた瞬間だった。

アプリ開発を通して人々に「直想便」を超える大きな価値を与えたい。「僕がおじいちゃんにもらった言葉みたいな、そういう宝物を何かしらのサービスとして届けられたら本望かなっておもってます。」と笑顔で語る。

 

 

アプリ「ニシキゴイ」インストールはこちらから。

河邉さんは外大プログラミング集団のTUFSgram(週に1〜2回集まって外大内でプログラミングをします)も開かれています。興味のある方は河邉さんtwitterよりお問い合わせください。

(文:白鳥菜都)