ラオスは日本人にとってはあまりなじみのない国かもしれません。もしかするとどこにある国かさえあまり知らない方も多いのではないでしょうか。日本とラオスの間には、今のところ定期便として直行便はありません。今回はそんなラオスの古都、ルアンパバンへ行ってきました。
ルアンパバンへはバンコクで乗り継いだ場合、東京からバンコクまで6時間半、バンコクからルアンパバンまで2時間ほどで、乗り継ぎ時間を含めると最短で約13時間ほどです。ベトナム、韓国や中国からも直行便があります。今回は、クアラルンプールまでマレーシア航空を利用し、クアラルンプールに1日滞在したのち、エアアジアを利用しルアンパバンへ飛びました。雨季になってしまうと本当に雨が多いそうなので、訪れるには11月~4月の乾季が良いでしょう。ただし、3月~4月は一年で最も暑い時期だそうです。
クアラルンプールの空港(例の騒動が起きる約2週間前の話です)のルアンパバン行きの便のゲートの前は、本当にこの便がアジアの国ラオスへ向かうのか心配になってしまうほど、ドイツやフランスなどヨーロッパからやってきたお客さんたちでにぎわっていました。この時私は、ルアンパバンという街がいかにヨーロッパの方たちにとって人気があるかを知りました。
ルアンパバンはかつてラオスの都であり、そして日本の仏教とは少し異なる上座部仏教(と私たちがよんでいる)ラオスにおける仏教の中心でもありました。街には美しい寺院が数多く作られ、仏教の精神がしっかりと受け継がれていくと同時に、それらの寺院や仏塔も守られてきました。また、ルアンパバンはラオスを代表する都市であるとはいえ、非常にのどかな小さな街で、街から少し離れると美しい自然が残されています。
ルアンパバン旧市街は町全体が世界遺産に登録されています。
写真はルアンパバンのシンボルである、ワット・シェントーンです。ルアンパバンにはこのような美しい寺院がたくさんあります。寺院の中は地元の方々が大きな黄金の仏像の前で祈りをささげていました。また、寺院には多くの子どもたちが修行僧として住んでます。
ラオスでは、男性であれば一生のうち一度は出家し、徳を積むべきであると同時に、僧侶は尊い方々だと考えられています。一方で、彼ら修行僧はこれからのラオスの担い手でもあります。熱心に勉学に励んでいる方もおり、街の本屋さんでは彼らに本を買って寄贈することもできます。
実際にフランス人のご夫妻が英語を学ぶ修行僧の子に辞書を買ってあげるところに遭遇しました。早朝には、一般のルアンパバンの方たちが僧侶の方たちにごはんなどを手渡していく托鉢が行われており、通りに托鉢を受けるオレンジ色の袈裟を着た僧侶の方たちと、托鉢を施すラオスの方々が長い列を作る様子からは強い信仰心がうかがわれ、尊い感じがしました。
ただし、多くの観光客が押しかけており、残念ながらその一部…というよりはかなり多くの人達が、マナーを守れずに托鉢の妨げになっているのが現実です。受け継がれてきた仏教の精神を私たち観光客がさまたげるということは、本来あってはなりません。どこの国へ訪れる際にも、現地の文化・伝統への敬意を忘れずにいたいものです。
それから、旧市街にあるプーシーの丘からは美しい夕日を眺めることができます。気の遠くなるような階段を上った先にある、険しい山々がシルエットになった夕景は素晴らしかったです。(いいタイミングの写真をなんと撮り忘れました。ごめんなさい。)
夕日が終わる時間ごろから、丘のふもとの大通りではナイトマーケットが始まります。たくさんの工芸品等をとてもお手頃な価格で買うことができます。ルアンパバンの方たちはとても素直というのか、商売っ気がないというか、あまり売りつけようとしてくるようなこともないうえに、値段も割と初めから良心的な値段を提案してくれます。買い物がしやすくてこちらとしては良いのですが、商売としてそれでよいのかはわかりません。ですが、それもルアンパバンの魅力なのかもしれません。
ルアンパバンの旧市街にはお寺巡りにつかれたときやごはん時に入れる、おしゃれなカフェやレストランもたくさんあります。物価は観光地なので日本より少し安いくらいですが、どのお店も店員さんものんびりしていて、ゆっくり過ごすことができます。本当にこの街はどこにいてものんびりと、穏やかにすごすことができるのです。
さて、ルアンパバンの旧市街はとても素晴らしいところですが、更なる魅力は郊外の美しい自然にあると思います。今回は現地のツアー会社が催行していたツアーに参加しました。象に会いに行ったあと洞窟にいって、その後クアンシーの滝に訪れるというものです。トゥクトゥクでも訪れることは可能ですが、特にクアンシーの滝は近くないことに加えて、道の舗装状態も悪いのでお勧めしません。
写真は象に会いに行く前に立ち寄った、織物や蒸留酒などを作って販売している、ガイドの人がウイスキーヴィレッジと呼んでいたところの様子です。ラオスの蒸留酒は蛇やサソリが入っていたりして、インパクトが強めでした…。
ラオスの方は基本的に英語を話せる方が少ないので、一緒に行った友人がラオス語で現地の方と楽しそうに話しているのは少しうらやましかったです。現地の方の第一声はたいがいどこでラオス語をおぼえたの?だったようですが(笑)
それからやってきたエレフェント・ヴィレッジでは象たちに会えました。
背中に乗って森の中を一周です。歩いている最中に、乗ってから渡されたサトウキビを象がほしがるたびにあげながらゆっくりと進んでいきました。サトウキビを食べて生活しているなんてさすが東南アジア。ここの施設には日本人の女性がいました。彼女はとても忙しそうでお話を聞く機会すらありませんでしたが、ラオス人の職員さんたちは非常にのんびり。
彼女はどうやらラオス語が話せないようで、時々聞こえてくる「働かねえなあ!」からは日々の苦労がうかがわれました…。ただ、それくらいにのんびりしたところなのです。
象を見ながらお昼を食べると、ラオス人のガイドさんになぜか目の前のメコン川に連れていかれました。しばらく草むらを歩くと船がありました。そこから洞窟までメコン川をクルーズです。椅子はどこかの中古車からとってきたのを置いただけの、カラフルだけど木製で頼りない感じの船でした。
洞窟のなかにものすごい数の仏像が置かれていました。
ちゃんとした立派なものから、チープな感じのもの、痛みの激しいものまで様々ですが、すべて現地の人が持ち込んだものだそうです。ここはメコン川が増水しても水没したことはなく、また第二次世界大戦時とその後の戦禍からも免れた場所なのだそうです。
いかにもラオスらしい(?)トラブルは戻りの船で起きました。写真は私たちの船を追い抜く船とメコン川の風景です。
突然船が川の真ん中で止まり、船長が何やら小言を言いながら船の後ろへ。しばらくすると何やらチャポチャポ音がしてきました。見てみると船長がコップのようなものでバケツに入った燃料をエンジンに…。一緒に乗っていたドイツ人はCrazy!といって大ウケしていて、なんだか和やかな雰囲気になりましたが、整備はしっかりとしておいてほしいですね…。
そして最後に向かったのが、私たちが一番楽しみにしていたクアンシーの滝です。いくつもの小さな滝が連なっていて、滝全体が国立公園のようになっています。滝つぼが水色で非常にキレイでした。
泳いでも良い滝つぼもあります。多くの人でにぎわっていましたが、水着をもってきていなかったので中には入りませんでした。
ルアンパバンの郊外を移動しているときも車窓からはラオスの手つかずの自然と、ラオス人たちののんびりした生活を垣間見ることができました。本当にここは行く価値があると思います。
ルアンパバンの名前を知っている日本人はおそらく非常に少ないですが、本当に素晴らしいところでした。正直僕もここに来るまでは、ラオスにはいったい何があるんだろうか、ルアンパバンなんて聞いたことがないけれど、本当に良いところなのだろうかと思っていましたが、想像できないほど魅力にあふれていました。もっと多くの日本人にルアンパバンの良さを知ってもらいたいです。日々の生活に疲れたらルアンパバンでのんびりしませんか?
(文・増田一磨)