国連公用語、話者人口は4億超!スペイン語の魅力から学習法、オススメ参考書までを一挙紹介

¡Mucho gusto!

本記事の担当を務めるスペイン語科2回生の加瀬拓人です。さて、Web情報紙“Wonderful Wandar”、楽しんでいただけていますでしょうか?

ご存知の通り、本情報紙は東京外国語大学の学生ならではの視点をもって皆さんの旅や留学の一助となるような情報の発信を行うことを目的としています。しかしながら、外大生が発信できるのはそれらのみではありません。日常的にさまざまな言語が飛び交うここ東京外国語大学では、27にも及ぶ言語の中から専攻を選ぶことができ、すなわち各学科の生徒たちはそれぞれもれなく専攻語をスキルとして備えているわけであります。さまざまな言語を専攻するそんな学生たちと対談を行い、その言語の魅力や難解さ、オススメの学習法や参考書などなど、一般の語学書からはなかなか得られない情報を発信していくことが本企画の目的です。

英語やフランス語のような学習者の多い言語はもちろん、例えばカンボジア語やウルドゥー語のような比較的学習者の少ない、けれど心惹かれる言語までカバーします。その他にも、東京外国語大学で学べる言語として、例えばサンスクリット語やカタルーニャ語、コリマ・ユカギール語などなど、ほとんどの人が「それって一体どこの言葉?」と驚いてしまうような言語も特別回にて扱い、その魅力を紹介していく予定です。

外大の受験生で学科選びに迷っている方はもちろん、言語を学びたいけれどどこから始めればいいかわからないという初学者の方、世界で話されているさまざまな言語の概要が知りたい方などにとっては特に有益な情報になるものと確信しております。外大にたくさん生息しているであろう言語オタクの方々には少しばかり物足りない内容かもしれませんが、初心を思い返して読んでいただければ良いのではないかなと思います。

さあ、前置きが長くなりました。さっそく第1回を始めましょう。

【第1回】スペイン語(Español, Castellano)
 ゲスト:スペイン語科 加瀬拓人
1. 自己紹介
さて、記念すべき第1回ですが、イントロダクションも兼ねて、筆者自身の専攻語であるスペイン語について書いていきたいと思います。まずは改めて自己紹介をさせていただきます。東京外国語大学2回生の加瀬拓人です。スペイン語・ラテンアメリカ地域を専攻としており、スペインの伝統芸能であるフラメンコのサークルに所属してカンテ、すなわちフラメンコの歌を歌っています。スペイン語は私にとって素晴らしく魅力的な言語ですが、その他にもフランス語やラテン語、サンスクリット語など計7言語ほど学習しています。

2. なぜスペイン語を専攻したのか
私がこの言語を選んだ理由はいろいろとありますが、やはり決め手となったのはいわゆる「スペイン語圏」の広さであります。話者人口は4億を超え、スペインのみならずラテンアメリカ地域のほとんどの国で公用語として用いられていますし、国連の公用語でもあるわけです。古代ローマ帝国の公用語であるラテン語から派生した他のロマンス諸語(後述)との互換性も高く、特にポルトガル語との類似性には驚くことでしょう(イタリア語もですが)。つまり、英語とスペイン語を習得すれば、アメリカ大陸をほぼカバーできることになります。英語に加えてスペイン語を深く学ぶことによってさらに多くの世界を知ることができるのではないか、という知的好奇心が私をこの言語に導いたということです。

同様のシェアを有する言語としては他にフランス語やアラビア語、中国語なども考えられますが、スペイン語の音の響きに惚れ込んでしまったことや、ラテンアメリカの政治や経済(特にアルゼンチンとメキシコ)に興味があったことなどもあり、最終的にはスペイン語を専攻することに決めました。

3. スペイン語の魅力などについて語る
まず、発音の規則が非常に明確かつ厳格であるということが挙げられます。ラテン語の特徴であるところのいわゆるローマ字読み(アルファベットをそのまま表音文字として読む)を踏襲し、一部の例外的な規則(例えばhを発音しない、ñ(エニェ)という文字の導入など)を押さえてしまえば、外来語を除き、初見で発音ができない単語は一切ありません。アクセントの位置決定も同様に規則的です。英語も見習ってほしいものですね(笑)

例 hacienda アシエンダ español エスパニョール

次に挙げたいのは、英語と比較した場合の語彙の類似性です。今日、多くの人々が母語としている、あるいは外国語として学んでいるとされる英語ですが、英語という言語はその歴史の中で非常に多くの単語をラテン語あるいはその派生言語から採り入れています。つまり、あなたが英語を学んでいれば、少なくともスペイン語の語彙を習得する作業が、かなり楽になるというわけです。

例 university(英)universidad(西)ウニベルシダッ
student(英)estudiante(西)エストゥディアンテ
city(英)ciudad(西)シウダッ
park(英)parque(西)パルケ
music(英)música(西)ムシカ
professor(英)profesor, ra(西)プロフェソール、ソーラ
day(英)día(西)ディア
soup(英)sopa(西)ソパ

今パッと思いついた単語をちょっと書き出してみましたが、実際にスペイン語に触れてみれば、相当多くの単語が英語からの類推で理解できることがわかるでしょう。つまるところ、学習を始めるにあたっての垣根が比較的低い言語であり、かつ英語やフランス語などのように広範囲で非常に有用たり得る言語であるということが大きな魅力の一つと言えるでしょう。

4. スペイン語を学ぶ上では、ここが難しい!
スペイン語を含めたロマンス諸語(イタリア語、ポルトガル語、フランス語など)には共通する特徴ですが、動詞が時制と人称によって変化していきます。1人称から3人称までの人称に単数・複数の区別が加わり、一つの時制につき動詞が3×2=6通り変化します。一方、スペイン語の時制としては直接法の現在、点過去、線過去、未来、過去未来および接続法(英語における仮定法のようなものだと捉えておいてください)の現在、過去の大きく分けて7つがあります。

単純に考えて1つの動詞が6×7=42の変化をすることになるわけです。大部分は規則的な変化を行いますが、不規則動詞も多く、スペイン語はこの活用の多さが鬼門ではないかと個人的には考えます。私なども読解や会話において未だに瞬時には活用させられないことが多々あります。

加えて、名詞、冠詞および形容詞に単数・複数という数の概念のみならず男性・女性という性の概念が登場してきます。上に挙げた単語で言えば、profesorは男性形、profesoraは女性形といった感じです。実際のところ、ことスペイン語においてはこの性と数の考え方はそこまで難しくないのですが、文法的性をもつ言語に初めて触れる初学者の場合、慣れるまでは戸惑うかもしれません。ただ実際男性形か女性形かということを識別するにあたっては、例えば語末がoであれば男性、aであれば女性の場合が多い、などの諸々の定石があるので、心配はいらないと言って良いでしょう。

それ以外には例えば目的格人称代名詞(英語で言うmeやhimにあたる)が少しばかり複雑であることなども挙げられますが、私としては比較的学習しやすい言語であると思います。

5. オススメの教材や勉強方法
・東谷穎人『はじめてのスペイン語』講談社、1994年。
新書です。スペイン語の全体像をざっと掴むのに適しています。教材というよりは読み物として、スペイン語への興味を引き出すために用いるのが吉。

・佐藤正透『暮らしのスペイン語単語8000』語研、2007年。
私が使用している単語帳です。トピック別に8000語もの単語が収められており、熟語や会話表現もある程度カバーしています。いわゆる、「痒いところに手が届く」と言ったような単語帳です。主に会話での辞書として用いることが多いです。

・フリオ・ビジョリア・アパリシオ他『耳が喜ぶスペイン語 リスニング体得トレーニング』三修社、2012年。
100の長文が易から難へと段階的に配置されており、ネイティブスピードの音声吹き込みCDが付属しています。見開き1ページにスペイン語と日本語の対訳が掲載されており、リスニング教材としてオススメです。文章のテーマもスペインやラテンアメリカへの理解が深まるようなものが多いです。

6. 最後に
以上、まだまだ語りたいことは山ほどあるのですが、スペイン語の全体像が掴めるような最低限の内容は書いたつもりです。言葉を知れば、その言葉が話されている地域の社会や文化をより深く理解することができます。興味を持った方は是非、魅力あふれるスペイン語の世界へと一歩踏み出してみてください。

最後に、私の好きなカンテ・フラメンコのレトラ(歌詞)で締めくくりたいと思います。
No te vayas todavía, que hasta la guitarra mía llora cuando dice “adiós”.
ノ テ バジャス トダビア, ケ アスタ ラ ギターラ ミア ジョラ クアンド ディセ “アディオス”.
(まだ行かないでくれ、別れを告げようとして俺のギターまで泣いている。)

(文・加瀬 拓人)

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