Cuban kind はどこへ?

キューバ人青年が憂うキューバの現状

近年日本では物価高が叫ばれているが、キューバにももれなくその波が押し寄せている。例えば、1Lペットボトルの水の値段が以前は15ペソ(約15円)だったのが、今では200ペソ(約200円)だ。私自身、外国人であるためキューバ政府の配給にあやかることができず必要なものは商店で買うのだが、水の値段が日本よりも高いのに驚いた。

Marioは以前レストランに行ったときに小さなコップ一杯の水が10ペソで驚いたと言っていた。「外で寝っ転がっている犬にあげる程度の水に10ペソも払うのはおかしい。キューバはCuban kind(Human kind)を失ってしまった。」そう彼は語った。

「キューバではインフレが進みすぎて国民が金ばかりを求めるようになった。チップをもらえるかもしれない外国人には愛想がよく、そうでないキューバ人には無愛想が普通だ。観光客を見たらまずどうやって儲かろうかと考えるようになってしまった。」

私自身、信頼していた学校の先生にUSBをねだられたり、国営ミュージアムの入場料をぼったくられそうになったりと外国人としてキューバで生活するときにはいつも人を疑わなければならない現状を寂しく思っていた。それだけに彼の言葉にはひどく重みがあった。二重通貨制が廃止されたとはいえ、依然としてキューバ人と旅行客の間には大きな壁がある。タクシーの値段はキューバ人と外国人で10倍ぐらい違い、どれだけ値切っても外国人をキューバ人と同じ料金ではのせてくれない。大学では外国人とキューバ人は全く違う授業を異なる校舎で受けているし、街で話しかけてくるキューバ人は友達になりたいのではなく外貨が欲しいだけの場合がほとんどだ。他の国へショートビジットに行った学生には奇妙に聞こえるかもしれないが、3週間の中で生のキューバ人と触れ合い、友人になることができたのは奇跡的なことなのだ。

しかし壁を作っているのはキューバ人だけの問題ではない。私は自分がキューバに来てからお客様精神で生活していたことをHabana Viejaを訪れたときに思い知ることになる。

Habana Viejaの街並みは、上のスライドショーにあるようにセピアでアンティークな雰囲気が特徴だ。旅行雑誌を見たら必ず乗っている観光スポットではあるが、そこには地域の人たちの生活が根付いている。東京に住んでいる私にはこの街並みは非日常的で綺麗だった。綺麗だね、とMarioに言うと、「外国人にとってはそうだろう。しかし僕はこの景色を見ると胸が痛くなる。なぜ政府はこれらの家をきちんと補修してあげないのかと感じてしまうからだ。」この言葉に、今までの自分はキューバを表面でしか見ようとしていなかったことを気づかされた。相手のことを深く考えていなかったのは私も同じだったのだ。「キューバ人と外国人は違うんだ。結局分かり合えない。」という感覚が無意識に私の中にあったのが見透かされたような気がした。キューバという国の真髄に触れるには3週間は短すぎる。しかしこの彼の一言は間違いなくただの観光客気分だった私を変えてくれた。

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国際社会学部・ウルドゥー語専攻 行ってみたい国:キューバ、タヒチ、アイルランド ひとこと:ジャガビーを常備すると幸福度が10上がります