ヴィーガンなんてやる意味ないよね!、、、って本当にそう?

撮影:坂田 諒之介

 家の最寄りのスーパー。どこにでもあるそのスーパーの一角に目を向けてみると、日本では見られない光景が目に飛び込んでくる。棚の上から下までplant-basedの商品が並べられているのだ。ピザ、ハンバーグ、パイ、、、動物性食品があって初めて成り立つものだと思っていたものが、いくつも当たり前のように並んでいる。

ALDIの冷凍食品のコーナー
Sainsbury’sのMeat Freeのコーナー

 僕の留学しているイングランドはヴィーガンにとってかなり暮らしやすい国だといえる。スーパーには必ずと言っていいほどヴィーガン向け商品のコーナーがあり、ヴィーガンレストランも数多く存在する。普通のレストランにもヴィーガンが食べられるメニューの隣に印がしてあったりヴィーガン用に別のメニューまで用意されていたりする。イングランドで生活をしていて食事に困ったことは一度もない。

WetherSpoonのフードメニュー。メニュー名の横にヴィーガンやグルテンなどの表記がある

  

 しかしながら世界的に流行り出してきているヴィーガニズムも数値で見るとまだまだ少ないのが現状で、このままの増加スピードでいっても次の十年で人口の一割に達するかどうかというところだ。日本に関して言えばまだまだ否定派の方が多いような印象を持つし、イングランドでもかなり少数ではあるが否定的な意見を持つ人もいる。

   

 特に日本では

「ヴィーガンなんて意味がない」

「ヴィーガンをやるなんてばかだ」

なんて言葉はよく目にするし、ヴィーガンを実践している人が周りにいる人も殆どいないだろう。実際僕も自分が今まで関わってきた人で実践している人はいなかったように思う。

そしてやはりそれは僕がヴィーガンになる前に抱いていたのと同じように

「肉を食べないのになんでわざわざ代替肉なんて作ってるんだろう。本物があるんだから食べれば良いのに。」

「ヴィーガンも生き物を殺しているじゃないか。」

というようなステレオタイプ、理解の低さがまだまだ存在しているからではないだろうか。 

  

 ではこのヴィーガンに対する考えは本当に当てはまるのだろうか。僕が以前まで抱いていたヴィーガンに対するステレオタイプや考えを例にあげつつ話してみたい。

まずは上にも挙げた「わざわざ代替肉を作って食べるなんて意味がわからない。」という言葉。

「わざわざ似たものを作ってないで本物を食べれば良いのに。自分で食べない選択をしたくせに結局肉を食べたいんじゃないか。」

それに対して以前の僕は本気でこう思っていた。そして今も同じような考えを持っている人は沢山いると思う。結論から言うと、ヴィーガンの人の中にも肉を食べたい人はたくさんいる。さらにヴィーガンになる前はマックやケンタッキーが好きだったなんて人もざらにいるだろう。僕もそのうちの一人だ。ではなぜ本物の肉ではなく偽物の代替肉を食べるのだろうか。

 彼らが肉を食べないのは肉を食べたくないからではなく肉を食べるのが環境破壊や動物搾取に間接的に繋がるのを知っているからだ。肉は食べたいけど肉を食べれば負担になる。だから環境負荷の少ないもので出来るだけ肉に似たものを作ろうというのだ。お酒を飲む人ならノンアルコールなんかを思い浮かべてみればいいだろう。(その理由は少し異なるが)

 そしてもう一つよくある

「生きている以上他の命を頂くのは仕方のないことだ。食べ物に感謝して食べればいいじゃないか。」

という意見。これも以前まで僕が思っていたことだ。確かに一理あるように思えるがやはりこれも少し視点を変えてみると見えてくることがある。

そもそもヴィーガンは殺す命をゼロにする活動ではない。もちろん生きる上で他の生き物(植物も含め)の犠牲が必要なのは分かっている。だからこそその犠牲を少しでも少なくするための活動なのだ。また、日本の食べ物に感謝する「いただきます・ごちそうさま」の文化ももちろん素敵だし大事にしていくべきものだと思う。しかしながらそれもやはり動物を搾取する理由にはなり得ない。どうしても必要なお金を友達に貸すのと、その友達が勝手に自分の財布からお金を取るのと、どっちも感謝されたとして同じように許せるだろうか。

  

  自分の今までの考えと全く違うものに出会った時、反射的に守りに入ってしまうのは人間として当然のことだ。ただそこで少し視点を変えてみればまた新しいものが見えてくるはずだ。

僕が今ヴィーガンをしている理由は、将来子供ができた時に子供には環境のことを危機感をもって考えて欲しくないと思っているからだ。今の消費スピードが続けば数十年の間に今と同じ生活は全くできない状況になっている可能性がある。そのツケを払わなきゃいけないのは僕達や僕達の親じゃなくて未来の世代で、僕はそこに無責任でありたくなかった。

  

 最後にイングランド出身の著名な動物学者”David Attenborough”とヴィーガン活動家“Ed Winters”を紹介させてほしい。前者はかなり有名なので知っている人も多いだろう。後者は僕が個人的に好きでよく見ている人だ。デイビッドはその道の権威とも言えるような人で数々の生態系ドキュメンタリーを手がけてきた人だ。御歳94歳、人生の多くをこの道に注いできた彼から放たれる言葉や映像はどれも力強くメッセージ性に満ちている。Netflixにも多く作品があるので気軽に視聴もできる。下にリンクも載せておくので是非一度見てみてほしい。

エドは”Earthling Ed”を名乗っており、ヴィーガンとして環境や動物の保護に向けて活動している。自身の主張や現在の問題を実際のデータに基づいて非常に分かりやすく説明しており彼の投稿からだけでも殆どの情報を集めることが出来るだろう。特に、彼のInstagramのアカウントにあるexcusesでまとめられているハイライトなどは特に面白い。(ヴィーガンに対する反対意見への返答。)

 

 もちろんヴィーガンが唯一の正解だとは思わないし、色々な選択肢があって然るべきだと思う。しかしながら何かしらの形で環境に対するアクションをとるのは大事なことではないだろうか。世界的に見れば、ヴィーガンとまではいかずとも環境のために何らかの形で自身の食生活に変化をもたらすのは当たり前の選択になってきている。もし気になった人がいれば「Meet Free Monday」(月曜日だけ肉を食べない活動のことで、ポール・マッカートニーによる提唱)からでもぜひ始めてみてほしい。

(文・坂田 諒之介)

 

〜興味を持った方へ、お役立ちリンク、サイト集〜

・ヴィーガンとは、ヴィーガンになる理由などについて簡単に分かる記事。(TokyoVegan)
https://tokyovegan.net/what-is-vegan/

・欧州で話題のフレキシタリアンについて(TokyoVegan)
https://tokyovegan.net/what-is-flexitarian/

・Ed Winters Instagramアカウント
https://instagram.com/earthlinged?utm_medium=copy_link

・Ed Winters YouTubeアカウント
https://youtube.com/c/EarthlingEdChannel

・David AttenboroughのNetflix上の代表作とも言える作品
https://www.netflix.com/pl-en/title/80216393

・GreenPeace ヴィーガン以外の環境問題の取り組み方も載っている
https://www.greenpeace.org/japan/