この春、本を読み始めました—月替わりエッセイ第19弾

 

春は心機一転、新しいことを始めるのに最適な季節だ。皆さんはこの春新しく始めたこと、もしくは始めたいことはあるだろうか。

私はこの春、読書を始めた。

始めたと言うより、再開したと言った方が正確かもしれない。小中学生の頃はわりとよく本を読む方で、二宮金次郎よろしく本を片手に登下校していた。それが高校に入ると単語帳になり、今ではスマホに置き換わってしまった。

大人になってからも本を読みたいと思うことはあった。しかし日々の「やらなければならないこと」にかまけて、その実、スマホを開けばメールのチェックよりSNSのチェック。作ろうと思えば時間はあったのに、結局は他のことと同様、気づかないうちに自分に自分で言い訳をしていたのが実情かもしれない。

 

そんな本とは縁遠くなっていた私が、この春読書に目覚めたきっかけは3つある。

1)本好きの友人
友人たちがオススメの本について生き生きと語っていた。

2)ポッドキャスト
この春英語の勉強にと、イギリスの出版社が配信するポッドキャスト(The Waterstones Podcast)を聴き始めた。

3)『A Girl is a Half-formed Thing』
憧れの女優が、コロナ禍でブッククラブを始めた。また彼女とインタビュアーが『A Girl is a Half-formed Thing』(Eimear McBride著)という本を絶賛していた。

 

 つまり誰かが何かを美味しそうに食べているのを見ると自分も食べたくなるように、誰かが楽しそうに本について語っているのを聞いたら自分も読みたくなってしまったのだ。結構単純である。

Eimear McBride 著, 『A Girl is a Half-formed Thing』, ロンドン:Faber & Faber

また偶然にも、3つ目の『A Girl is a Half-formed Thing』は、元ホストファザーの「お父さん」が去年私に送ってくれたのと同じ本だった。貰ったものの、英語で書かれているという理由から手をつけられずにいたのだ。そして同じくお父さんから貰った『Brida』(Paulo Coelho著)と一緒に、タンスの肥やしならぬ、本棚の肥やしになっていた。

Paulo Coelho 著, 『Brida』, ニューヨーク:HarperCollins

しかしこれほどのきっかけが揃ったのも何かの縁。この機に2冊とも読んでみよう。そう思った。

『A Girl is a Half-formed Thing』は手つかずだったが、少なくとも『Brida』は60ページほど読んだところで挫折していた。理由はもちろん英語だから。しかしそこは腐っても外大生。洋書一冊読めないでどうする。だから、

「まずは『Brida』から読んでみよう。そして『Brida』を読破したら、『A Girl is a Half-formed Thing』に挑戦しよう。」

この2つの目標から、私の春の読書チャレンジがスタートした。

 

読み始めて気がついたことがある。それは私がここ数年、活字を通して必要な情報だけを得ようとしていたということ。何か文章を読むときは大抵大学の授業や課題のためで、「趣味で本を読む」ということがめっきり減っていた。言い換えれば、実用性に重きを置いた読書生活を送っていたのだ。

しかし一見余分なものでも、そこには楽しみや感動、発見といった、私たちの人生に欠かせない要素が詰まっていることがある。余分を削った後に残る必要だけの生活はなんとも味気ない。私の場合、その余分の一つが本だった。

TumisuによるPixabayからの画像

だからこそ、久々に手に取った『Brida』の想像の世界は実用性一辺倒になりかけていた私を魅了し、そして60ページの壁を難なく越えさせるだけの力を発揮したのだと思う。これほど貪欲に活字を求めるということを久しくしていなかった私にとって、それは読書の魅力の再発見であるとともに、新鮮な感覚でもあった。

5年間放置していた『Brida』は、数日で読み終わってしまった。気づけば移動の隙間時間や寝る間も惜しんで、なんなら課題をやる時間も惜しんで読んでいた。純粋に「面白い」と思えた。今となってはなぜあれほど立ち往生していたのかわからないくらいだ。

読み終わってから無性に感動したので、本を送ってくれたお父さんにも読了報告をした。もちろん、とても喜んでくれた。

 

今、私は目標だった2冊目の『A Girl is a Half-formed Thing』を読んでいる。『Brida』が奥深いテーマを平易な言葉で書き表しているのに比べ、こちらは主人公の目線で語られる高度な文章術が特徴だ。はたして今の私の英語力でどこまで理解できるだろうか。多少の不安はあるが、とにかくこの春、私の読書チャレンジは順調に漕ぎ出している。

 

皆さんもこの春、これまで挑戦できなかったことにチャレンジしてみるのはいかがだろうか。

 

 

  • この記事で紹介した本

A Girl is a Half-formed Thing  

著 者:Eimear McBride
出版社:Faber & Faber
分 類:Contemporary Literature & Fiction

Brida

著 者:Paulo Coelho
出版社:HarperCollins
分 類:Contemporary Literature & Fiction
アイルランドを舞台に、女子大学生Bridaが知を求めてスピリチュアルな旅をする物語。運命や自己実現、人間関係を巡って戸惑いや葛藤を経験しつつ、一人の少女が大人へと成長していく様を描く。本書はポルトガル語から英語に訳されもので、日本語版は『ブリーダ』のタイトルで出ている。人生に迷ったときに背中を押してくれるような、印象的な台詞や場面がつまった一冊。

 

  • この記事で紹介したポッドキャスト

Angela Scanlon’s Thanks A Million | Caitríona Balfe: Starting a bookclub, her cat eddie, and working with Dame Judi Dench‪!‬
「日常の中で自分が感謝したいと思ったことをシェアする」というコンセプトのもと、ホストのアンジェラ・スキャンロンが軽快なトークで盛り上げる。コロナ禍で沈んだ気持ちもこれを聴けば元気になれるかも…?本エピソードでは、海外の人気ドラマ『Outlander』主演女優、カトリーナ・バルフが自身の経験を率直に語る。Outlanderファンは必聴!

The Waterstones Podcast
「Family」や「success」などのテーマに沿って著名な作家たちに話を聞いたり、旬の一冊を紹介したりするポッドキャスト。「洋書(英語の本)を読んでみたいけれどどれから挑戦したらいいかわからない」という人の参考になることはもちろん、英語の聞き流しにもオススメ。

 

(文・小林かすみ)

About Kobayashi Kasumi 26 Articles
長期休暇に入ると海外行きたい欲求が高まる日本語専攻4年。密かに2021年度のWonderful Wander編集長を務めています。愛読書は片桐はいり著『グアテマラの弟』。