きのこのソテーー月替わりエッセイ第25弾

台所からただよってくる

きのこを焼く香ばしいにおい

なつかしいにおい

きのこを焼くときは、油をひかずにそのまま焼くんだよ

料理好きの「お父さん」はそう言った

水で洗わず、油もひかない

むき出しの鉄のフライパンの上

じっと焼かれるきのこたち

きのこのソテーはたくましい

五感を刺激するものって、ふとしたときに懐かしい記憶を運んできますよね。それは何かの音楽だったり、味だったり、においだったり。私はそういうノスタルジックな感覚が結構好きです。ときどき寂しくもなりますが。でも好きです。

先日きのこの焼けるにおいを嗅いだら、急激にアメリカで過ごしたときの記憶が蘇ってきました。きのこは洗わずに油もひかずに焼くのだと教えてくれたのは、アメリカでお世話になったホストファザーでした。

料理のいろはを教わったのは日本の母から、スパイスや香りを楽しむことを教わったのはアメリカの父から、といったところでしょうか。

拙い詩ですが、これを読んでくださった人の中でもそれぞれの懐かしい何かが思い起こされていたら嬉しいです。

ちなみに油を使わずに焼いたものは厳密にはソテーではないですが、語呂がよかったので最後は「きのこのソテー」にしました。「日本語専攻なのに誤用を認めるの!?」という声については… 大目に見てください(笑)

(文・小林かすみ)

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長期休暇に入ると海外行きたい欲求が高まる日本語専攻(2018年度入学)。2019-2022年度編集長。好きな本は片桐はいり著『グアテマラの弟』。