我が家の末っ子は、黒くて、小さい。
おまけに目はビー玉のようにまん丸でキラキラしていて、おしりにはドーナツがちょこんとのっかっている。
性格はとっても甘えん坊で、社交的で、かなりマイペース。
典型的な末っ子気質なのだ。
我が家の末っ子は「パグさん」だ。
犬というよりは、どこか遠い宇宙からやってきた生命体に近い。
この摩訶不思議な存在と出会って、もうすぐ3年。
今年に入って、私たちは今まで以上に強い絆で結ばれるようになった。
新型コロナウイルスの蔓延によって、大学はオンラインに移行。
パグさんと私は、四六時中一緒にいるようになった。
昼間も家に人がいるものだから、パグさんにとっては毎日が週末のようだったに違いない。
普段の留守番では何時間でも寝ているのに、在宅勤務をする母の傍で「かまってちゃん」に変貌して母の手を焼かせた。
やがて母は在宅勤務の頻度が減り、私はオンラインでの留学が始まった。
家にはパグさんと私(と11才のカメさん)が残った。
時差のある私の生活の影響だろうか。
これまで超がつくほど早起きだったパグさんも、今ではときどき朝寝坊をする。
朝ゆっくり起きて、通勤時間帯を避けて散歩にでる。
その日の行き先は、パグさん次第。
このときだけは、閉塞感から解放されて、モヤモヤした気持ちも忘れられる。
中にはパグさんに話しかけてくれる人もいて、気づけば私も知らない人と話している。
こんな日々が、いつしか私たちの日常になっていた。
平凡かもしれないけれど、毎日ちょっとずつ違う。
留学に行っていたら、手に入らなかった時間。
そう思ったら、こんな時間も、少し愛おしく感じられる。
もしかしたら、オンライン授業が始まってからのこの日々は、嬉しいことや楽しいことより、大変で、苦しくて、逃げ出したくなるようなことの方が多いかもしれない。
だけどどんなときも、私のとなりにはパグさんがいる。
しあわせな寝息を立てて。
(文・小林かすみ)