「教師という形で行ったけれど、逆だった。子どもたちに教えてもらうことの方が多かった」

英語科2年 内田みづきさん

2月中旬に日本を出て、ケニアの北西部、マサイ族が暮らす小さな村の小学校で、1ヶ月間ボランティアとして教鞭をとった。ボランティア斡旋業者などは通さず、知人がボランティアに行った先の小学校のスタッフに直接連絡をとり、昨年秋頃から準備を進めた。トイレは穴、食事は芋と豆が中心。屋根にたまった雨水を飲んで、現地の教員たちが暮らす宿舎で1ヶ月間生活した。日本での暮らしとはまるで違う環境だったが、「帰りたいと思ったことは一度もなかった」と笑顔で語る。

村にはテレビも新聞もなく、外部からの情報はまるで入ってこない。「近づくだけで叫ばれたり、逃げられたりして」黄色人種など見たこともない現地の子どもたちに、最初は奇異のまなざしを向けられた。それでも、子どもたちが内田さんの虜になるのにそう時間はかからなかった。日本の話、世界の話。内田さんが語る、今まで聞いたこともない「村の外の話」に夢中になった。Mizuki, これはなに?それってどういうこと?もっと教えて。もっと聞かせて。子どもたちの純粋な好奇心に、まっすぐなまなざしに、刺激を受ける毎日だった。「教えるって、こんなに楽しいことだったんだ」

村は、慢性的な教員不足・物資不足に悩まされている。教科書のレベルがあっていなかったり、美術や音楽の授業がほとんどおこなわれていなかったり。そんな現状を少しでも変えようと、1ヶ月間、なるべく幅広く、ときには授業の分野の枠を超えて、教えられる限りのことを教えようと努めた。

迷うこともあった。外のことを何も知らない子どもたちに、どこまで教えるべきか。知ってしまったら、知らない頃には戻れない。この先一生、村の中だけで生きていく子どももいる。知らない方が幸せということもあるのではないか。

変えられないこともあった。ケニアでは、体罰がごく当たり前のものとしておこなわれている。「体罰などなくても、子どもたちの統率をとることは十分に可能」と何度説得しても、「アフリカの子どもと日本の子どもは違うのだから」と聞き入れてもらえなかった。

1ヶ月でかかった費用は、航空券も含め約13万円ほど。居酒屋でのアルバイトに励み、貯金に勤しんだ。月に25万円稼いだこともあるという。やりたいことのためなら、努力は惜しまない。「ゴールデンウィークはインドネシアに行くんです。夏は、昔お世話になったフィリピンの英語学校で2ヶ月間インターンをすることになっていて。冬はひとりでバックパッカーをしてみたいな。あ、それと、ケニアの小学校での備品不足をなんとかしたい。外大で文房具回収を呼びかけられないかなと思っていて」。夢は尽きない。

↑内田さんにもらったペンを手に、喜ぶこどもたち

(文・三橋 咲)

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「人の顔が見える記事」を目指して。ことばと旅がすきなTUFPOST代表兼Wonderful Wander編集長です。