そびえ立つ崖、”宙づりの家”、大聖堂、小川のせせらぎ…世界遺産の街スペイン・クエンカの魅力

スペインの首都マドリードからバスで2時間半。東の大都市バレンシアとの中間地点に、Cuenca(クエンカ)はあります。世界遺産に登録され、宙づりの家(Casas Colgadas)で知られる同地に3日間滞在し、すっかりクエンカの虜になってしまった筆者が、旅行者目線ではありますが、その魅力をすこしでもみなさんに伝えるべく現地の様子をレポートします。ハプニング続きの旅でしたので、そのへんも楽しんでいただけたらうれしいです。

 

さて、私は今回マドリードからavanzaというグループのバスを利用しました。曜日によって多少本数は異なるようですが、平日は毎日1時間半〜2時間おき程度で運行しているのでとても便利です。価格も片道12ユーロと良心的!満席になることはまずないので、出発の30〜20分前くらいに駅に行って購入すれば大丈夫だと思います。

AVE(スペインの高速鉄道)だと1時間〜1時間半程度で行けるのでより早いのですが、お高いので今回はやめておきました…。

 

出発の直前、マドリードの宿のスタッフと「これからクエンカに行くんだ」「クエンカ?車の免許は持ってるの?」「え、持ってないよ」「持ってないのにクエンカに行くの!?」という会話を繰り広げたのですが、彼の言葉の意味などこのときは知る由もなく…

2時間半のバス旅を経て、到着!

ここからが苦行のはじまりでした。

 

というのも、マドリードの宿のWi-Fiを使い、チェックアウトする直前に宿を予約していたのですが、インターネット接続の調子が悪くエラーが連発。最終的に予約完了画面にはたどり着いたものの、本当に予約できたのかはきわめて怪しい状態。バスの時間があったのでそのまま宿を出ましたが、なんとなく不安が残っていました。宿なしはさすがに困るし、そもそも予約できていたとしても宿の場所がいまいちよくわからなかったので、クエンカのWi-Fi付きカフェででも確認しよう!と思っていたのです、が。

 

クエンカに着いたのは午後3時頃。マドリードではあまり実感がなかったのですっかり忘れていたのですが、ここはスペイン。午後3時といえばシエスタ(お昼の休憩時間のこと。都市部ではそうでもないが、郊外ではほとんどのお店が閉まってしまう)真っ最中。当然カフェなどあいているはずもなく。大通りのお店は軒並みシャッターを閉め、ひとっこひとり歩いていません。(後日知ったことですが、クエンカにはそもそもWi-FIつきのカフェなどというものはほとんど存在していませんでした)

 

いやいや、でもさすがにここは世界遺産。観光客がたくさんいるところに行けばマクドナルドのひとつやふたつきっとあるに違いない!

 

とにかく活気ある場所に行こうと、この街で最も有名なCasas Colgadas(「宙づりの家」)を目指します。

こちらがCasas Colgadas。渓谷にせり出し今にも落ちそうな様子から「宙づりの家」とよばれているもよう。クエンカを訪れる人の大部分がこの家を見にゆきます。(写真:wikipediaより)

がしかし、画像を見ておわかりの通り、この家はそびえたつ崖の上に建っています。ここにたどり着くには坂道を延々と登っていかなければなりません。当時のわたしは旅に必要なあれこれが詰まった大きなバックパックを背負っています。気温は37度です。日差しが強いので体感温度はさらに高い。わたしの体力について言及しておくと、高尾山登頂でへばるくらいの代物です。

しかし、とにもかくにもWi-Fiが必要なので、がんばって登ります。隣の車道では車がすいすい登ってゆきます。マドリードの宿での会話を思い出したのはこのときでした…

しかしこの坂道がなんとも美しいのです。途中何度も足をとめて写真を撮影していました。

およそ30分ほどかけて登った頃でしょうか。上方に見覚えのある風景が!

あれはなんだ!Casas Colgadasだー!

 

やったー!と喜び、残りの道を早足でかけ登ります。渓谷にかかるサン・パブロ橋からみた景色は絶景そのもの。崖と一体化した家々はもちろんのこと、クエンカの大自然や町並みなど、足元を見れば思わずすくんでしまうような高さのため、遠くまで一望することができます。

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ひとしきり景色を堪能したあと、いざ観光客が集まる中心地へ!

 

…と意気込み街に入ります。しかし目の前に広がるのは閑静な住宅街と木漏れ日差し込む公園のみ。2〜3人なにやら観光客らしき方々がいるものの、通りにはほとんど人がいません。あれ…世界遺産の街の一番の目玉スポットにいるはずなんだけどな…今…

 

もちろんWi-Fiつきのカフェやマクドナルドなんてものは全く望むべくもなく。ここまで重いバックパックを背負って登ってきたのになあと途方に暮れるわたし。けれど、崖の上の街から見る風景はやはり格別で、家と家の間からひょっこりのぞいた景色に息をのみます。

これを見てすっかり元気になったので、また30分程度かけて(途中何度も休憩をはさみながら)えっちらおっちら山を下ります。このとき午後5時前後、宿はいまだ予約できているのかできていないのかよくわからず。

 

(後日知ったことですが、このCasas Colgadasから活気ある観光の中心地Plaza Mayorまでは徒歩5分程度。けっこうわかりにくいので、現地の人に道を聞くことをおすすめします。わたしは一本道を間違えていました)

 

どうしようもないので、よくわからないなりにとにかく宿に行ってみよう!行ってみて予約できているか聞こう!と歩き出します。はじめからこうすればよかったような気もします。

 

所在地がわからないので、宿の名前だけを頼りにありとあらゆる人に道を聞きます。3分に1回程度聞いたように思います。みなさん本当に優しくて、笑顔で助けてくれました。クエンカの魅力のひとつは住人の方々のあたたかさだなあとしみじみ感じました。

 

ちなみにこのあたりから本格的に疲れ出したので写真が撮れていないのですが、最終的に宿にはたどり着きました。

 

「あの、予約したと思うんですけど、できてます?」

「うーん、調べてみたけど、あなたの名前はないわね!

 

ええ〜。ベッド空いてませんかと交渉タイムに入るも、今晩は満室とのこと。共用スペースのソファとかでもいいんですけど…とごねますがあえなく却下されました。にわかに浮上する野宿の可能性。

 

再びバックパックとともに通りに放り出されます。今度こそ本当に途方にくれます。時刻は午後6時。寝るなら公園かなあと思いつつあてもなくさまよい歩くこと20分ほど。どこかにWiFi落ちてないかなあと、なんとなく携帯の電源を入れます。

 

すると、なんと鍵なしのWi-Fiがあるではありませんか!!

 

これに賭けるしかないと接続し、飛んだ先はなにやら大手Wi-Fi会社のホームページ。1年契約などの案内が並ぶ中、15分無料トライアルなるものを発見。神はまだわたしを見捨てていなかったようです。

 

あてにしていた宿以外にめぼしい宿がなかったので、急遽頼ったのはAirbnb(現地の人から居住スペースを借してもらうサービス。一般の人が貸し出していることも多い)。奇跡的に15分のうちにホストとのやりとりが完了し、その後も道に迷ったり等々したのですが奇跡的にたどりつき、奇跡的に屋根のあるところに落ち着くことができました…長かった…

奇跡ってほんとうにあるんだなあと実感しました。

一般の方のおうちにおじゃましたので写真は載せませんが、かわりにその家のすぐ近くの小川の様子を。街全体が人通りも多くなく、とても静かなので、小川のせせらぎと小鳥のさえずりだけが聞こえます。

 

クエンカの魅力を紹介するつもりが、このままだと単なるわたしのドタバタ旅行記として終わってしまいそうなので、最後にではありますがこの街で撮った写真の何枚かを掲載します。

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7月のクエンカはからっとしていて、抜けるような青空とそよ風がとても心地よいです。流れる小川とそびえる崖、大自然、ぼんやり灯るオレンジ色の街灯、木漏れ日と星空、迷路のように入り組んだ旧市街の細い路地、優しく穏やかな住民たち。小さな街ですが、クエンカはその懐の深さでもって旅人をあたたかく迎え入れてくれます。

いままで色々な街を訪れてきましたが、こんなに立ち去りたくないと心から思ったのはクエンカがはじめてでした。首都マドリードからほど近く、交通の便もよく、古都と大自然が見事に融合した場所であるクエンカ。観光客でごったがえした大都市をすこし離れて、心休まる小さな街で過ごしてみませんか。

もちろん、くれぐれも宿の予約はお忘れなきよう!

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「人の顔が見える記事」を目指して。ことばと旅がすきなTUFPOST代表兼Wonderful Wander編集長です。