スペイン語科1年 田中雅隆さん
東京外国語大学が誇る(自称)日本一ユニークな学園祭「外語祭」に向けて生徒たちが走り回っていた頃、宇野公子先生主催のスタディーツアーの一員としてスイスのジュネーブに飛び立った。
きっかけは経済学の授業。本来は宇野先生のゼミ合宿だが、スタディーツアーとして1・2年生にも門戸は開かれている。将来は国際連合関係機関(以下UN機関)で働きたいと考える生徒ばかりが参加しているイメージがあるが、「初めて知ったのは授業中に紹介されてから。せっかくだから行ってみるかと思ったのが経緯かな。周りは自分よりも意識の高い人ばかりだったけど。」と振り返る。
もともとカトリック系の高校に通っており、シスターから途上国での活動についての話を聞く機会があった中で、現地で働く団体とそれをまとめる国連の関係の理想と現実を知った。宇野先生はそのことを川に例えて、「国連が川上の仕事を担当し、現地の団体が川下の仕事をする。川上が上手く機能していないと川下も結果を残すことができない」と伝えた。「そんなに上の仕事が…と言われているのなら、実際に国連がどんな場所なのか見てみようと思った。」
今回訪れたのは経済分野を中心に計11箇所。各担当者からの説明を受けながら、疑問があれば随時質問するという形式だ。日本人のスタッフに対しては日本語で質問もできた。
意外だったのは、国際機関で働く時に最も重要視される英語のスキルは、ライティングだということ。提出する書類には必ず上司からのチェックが入る。表現を直される手間が少なければ少ないほど、仕事を素早く的確にこなすという印象を与える。仕組み自体は普通の会社と同じ。「もちろん彼らはいわゆる“エリート”なんだけど、決して手の届かない存在でもないと感じた。」時には日本人の上司が、ネイティブスピーカーの部下の文章を訂正することもあるそう。
UN機関で働く日本人の数は他の先進国に比べて圧倒的に少ない。もっと興味や憧れを持って欲しい、この中からいずれ実際に活躍する人が現れてもらいたい、それもこのツアーの趣旨の一つだ。
また、所属する外語祭実行委員会の活動にも、今回の経験との共通点を見出している。「外実が川上の仕事をしているなら、各語科は川下の仕事。普段は口を挟まないが、語科の間で問題が起こった時にだけ情報や解決策を提示する。」そんな彼の頭の中はすでに、次回の外語祭に向けていっぱいだ。
「去年の外語祭は参加できなかった分、次は思いっきり楽しみたい。」
(文:岡川桃果)